本展では土を素材に制作する植松永次の新作展を開催致します。
植松の作品の多くは独自のおおらかな造形と緻密に考えられた質感が印象的
ですが、作品のタイトルも興味深く、鑑賞者のイメージをより膨らませてく
れる。野焼きという手法で低温で焼かれた[記憶]という作品は、「焼成中に
爆発し、出来上がった」というクレーター状の部分が隕石や広大な大地を思
わせ、惑星や地球の記憶といった知り得ない空想の世界に思いを巡らさせて
くれる80㎝もの大作です。[白の戯れ]は球状の白土を合わせた立体でふん
わりとした感じと有機的な形状がどこか動物的、植物的といった生き物のよ
うにも思える。[風枝]は作者の造語で黄土色の土の筒を組み合わせた作品
で風という言葉がより空間を感じさせ、作為のない筒口のその先にもイメー
ジが膨らむ。そして本展のタイトル『土から』。よく陶芸家が「良い土」とい
った言葉を耳にするが植松は「良い土、悪い土といったものはない」と言う。
「畑の土や庭の土、通常、陶芸に使われないものも面白い」と。そして「毎
日通る道や、日々の生活の中に、何の変哲もなく転がっている物や空間の中
にこそ大切なものがあるのではないか。私の創る土の形や器が、そんな見過
ごされた時間や空間を感じる手がかりになれば、こんな嬉しいことはないと
思います。」などの言葉も印象に残る。インターネットなどで必要な情報が
すぐに入手でき、想像ということ自体が薄れてきている時代。会場で自分な
りに感じ、想像して作品と対話して頂けると幸いです。
gallery yamahon 山本忠臣
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