三谷龍二展 木の器

三谷龍二展 木の器

VOL.119_Ryuji Mitani

三谷龍二展 木の器

会期 2019年5月18日(土)〜 5月27日(月)
開廊時間 11:00〜17:30
休廊日 火曜
場所 gallery yamahon
作家在廊日 初日 5月18日(土)

Ryuji Mitani: Woodworking

May. 18, - May. 27, 2019
Wednesday- Monday 11:00 - 17:30
Map: gallery yamahon


◉ 生活工芸 木の器

僕が木のうつわをつくったのは、木工の仕事を始めて三年ほど経ってからだった。まだ自分のつくりたいものがはっきりと定まっていない頃で、経済的にも工房を持つことはできないでいた。それでも暮らしを立てていかなくてはならなかった僕は、住んでいた団地の、六畳間ひとつを仕事場に使って、そこで鳥や動物のかたちを木に掘り、彩色を加えたアクセサリーなどをつくっていた。同じ頃、松本周辺には家具職人が多く住んでいて、彼らもまた会社から独立して個人工房を持ち始めていた。地方の小さな町だから、そうした木工家と出会う機会は多く、ある日四人の仲間が集まって、ショールームを兼ねたショップを共同で持とうということになった。横山浩司、指田哲生、羽柴完、そして僕。他の三人はみな家具をつくっていた。彼らは松本で民芸家具の制作をしながら木工技術を習得したひとたちだ。彼らが目指したのは、楢や樺などの無垢の広葉樹を使い、丈夫で長く使える生活用具でありたいということ。そして量産品のほとんどが木の表面を厚い塗膜で覆ってしまうラッカーやウレタン塗装だったが、彼らは自然の木が持つ色や肌合いを生かすオイル仕上げで家具をつくっていた。木の風合いを生かすオイル・フィニッシュは無垢の木の仕上げとして相応しく、当時の工房スタイルの作家たちに支持されたのだった。工房を持てない時期に、「今自分なりにできることから始めよう」と木のアクセサリーをつくったことは、僕にとって必然だったと思う。でもそれをやりながらずっと気に掛かっていたこともあった。アクセサリーを僕は身につけないし、必要ともしていない、という当たり前のことだ。そうした疑問を抱えているとき、「暮らしの必要に応える道具」として家具を作る仲間たちと出会ったことは、僕には大きなものだった。無垢の木。オイル仕上げ。丈夫で、長く使っても飽きないかたち。そうした点は共通で、しかし家具とは違う暮らしの道具が他にもあるのではないだろうか。家具のように暮らしのなかの「用」に応えた、美しい生活道具がつくりたい、と僕は強くそう思うようになっていった。僕の食器の第一号、バターケースは、こんな風にして生まれたのだった。[木の匙(新潮社 2005)「バターケース」より]

 

PROFILE

三谷龍二 RYUJI MITANI
1952福井県福井市生まれ
1981長野県松本市に工房ペルソナスタジオ開設。陶磁器のように毎日の食卓で使われる木の器を提案。全国で個展多数。 また、立体作品、平面作品も手がける。「クラフトフェアまつもと」の運営に当初より携わり、現在も「工芸の五月」で工芸と 暮らしを結ぶ活動を続ける 。著書に『木の匙』(新潮社)、『僕のいるところ』(主婦と生活社)、『三谷龍二の木の器』(アトリエ ・ヴィ) 、「遠くの町と手としごと」(アノニマスタジオ)など。